研修、会議のための宿泊付施設であると同時に、社員とその家族のための保養施設としても利用される。
敷地はなだらかな南斜面が続く丘陵地の頂部、稜線沿いに位置し、その稜線に沿って大地に埋め込まれるように建物がつくられている。そのため北側のアクセス道路からは、3層の建物の最上部のガラス屋根(一部エントランスホール)しか見えない。これらのLOW-Eガラスは外部からの光を反射する性質を持つため、視覚的に空と一体化し、きわめて人工的な材料であるにもかかわらず、建物の存在感を消す効果を生み出し、建物の地下化と相まって、建物が周辺環境に溶け込む印象を与えることに成功している。宿泊室は南面して線形に配置され、その北側は谷のようなガラス屋根付吹き抜け空間に面している。それぞれの宿泊室は吹き抜け空間に向けて開閉自在の開口部を持つことによって通風輪道を確保し、冷房設備を不要にしている。吹き抜け上部には排煙窓を兼ねた通風排気窓があり、機能的にも意匠的にも洗練されたデザインである。冬は各室の南面の大窓から日射を取り込むと共に、ガラス屋根からの日射熱も暖房に利用する。吹き抜け空間には蓄熱のためのコンクリートが壁に付加され、パッシブソーラー効果をもたらして室温安定に貢献している。この他、地中熱を利用した導入外気の予熱・予冷、大浴室の換気システムなど、きめ細かな配慮がみられる。総じて、洗練された「ハイテクに裏付けられたローエネルギー利用」技術とデザインが特徴的である。
(小玉) |