旧都営住宅の建て替えにあたって、環境共生をテーマとして計画された先導的モデルとして注目されている作品である。
さまざま環境共生技術(風車、太陽光発電、太陽熱給湯、雨水利用など)を採用し、風の路を考慮した住棟配置やビオトープなどが試みられている。プレデザイン・デザイン・ポストデザインというデザイン行為を大きな流れのなかで幅広く実行していることは環境建築を支える設計者の役割として高く評価される。住民と行政との間に立って調整をはかる仕事も丁寧に行われている。暮らしのなかの大切な記憶(樹木・鉢植え・井戸・廃材の活用)が尊重され、継承されていることも、特筆される。しかし、いずれの場合にもいえるが、環境建築の評価には、時間的要素がとりわけ重要である。このまだ出来たばかりの集合住宅が、20年、30年後はどのようになっているだろうか。生き続ける建築のモデルとしても注目したい。
環境共生住宅のモデルとしてさまざまな提案を含みながら、その一方で居住空間の魅力という点でやや物足りなさを感じさせるのは公営住宅の標準的な仕様を越えていないことによるのだろうか。
(高間) |