講 評: |
益子に仕事場を持つ絵本作家のいわむらかずおさんの美術館は栃木県馬頭のなだらかな丘陵地の頂上にある。いわむらさんの作品は緻密な自然観察がベースになっているが、建物の周辺の起伏に富んだ地形は、雑木林や棚田や農場や池や泉があって、さながら絵本に出てくる動物達の生息地にのようでもある。実際、この周辺一帯は美術館を拠点にしたエコミュージアムとなっており、美術館を訪れる多くの人々にとって自然に親しみ、自然を観察し、学ぶ格好の場となっている。ひとつの建物が人々の自然への関心を深め、環境保全の行動をうながすのであれば、その建物は環境建築と呼ぶにふさわしい。このような成果を生んだハード、ソフトの周到な設計計画は高く評価される。さらに特筆すべきことは、地場産の木材を使い、その特性を生かした独自の構法によってのびやかな展示空間と休息のための空間を創りだしていることだ。空気集熱型太陽熱暖房システムと導入とあわせて環境負荷低減への貢献も評価される。(小玉祐一郎)
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