三宮(神戸)の駅をおりて、神戸港に向かう方向、主要幹線道路が立体的に交差する道路際に車の騒音も意に介せず、港の番人として堂々としかも品格を備えて建っているのが神戸税関 本関である。もともと、この建築は、1927年に竣工したゼツェション様式を感じさせる3層構成の官庁建築である。その後、増築を重ねたものの散漫な配置となり、業務にも支障をきたすこととなり、建て替えの構想となった。永らく市民にも愛されてきた旧本館を神戸の記憶としてとどめ、しかも未来に生きる建築として再生させることが設計のテーマとなった。結果としては、その意図は充分果たされ、成功している。
この建築のとりわけ優れている点は、自然採光、自然通風などを考慮し、複層ガラスの窓、水蓄熱槽、雨水利用などを考慮し、適正技術の活用によって、環境親和型庁舎を再生したことである。同時に、旧館の床や内装に使用されていた石材の再利用をはかり、歴史性、文化性などサステイナブル建築のもつべき幅広い配慮がなされていることである。これらのことが審査員一同に高く評価され、最優秀作品となった。 |