JIA 公益社団法人日本建築家協会

JIAの建築賞

JIA 25年賞・JIA 25年建築選

総評

2024年度 総評

 JIAでは「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく使い続けられ、地域社会に貢献してきた建築」を登録・顕彰してきた。建築が未来に向けて生き続けていくために、多様化する社会の中で建築が果たすべき役割を確認するとともに、次世代に繋がる建築のあり方提示することがこの賞の目的である。

 建築は息の長い存在である。計画時の施主や市民の思いを受けて、設計者が具体化し、建設工事を通して社会の中に誕生する。使われ始めて次第に日常の中に定着し、生活や活動の舞台として背景として人々と共に月日を刻むことになる。利用する人々に安心感、充実感、満足感、やすらぎを与え、絆や共感を創り出す場となり、その記憶が積み重ねられて地域の歴史や文化の構成要素となってゆく。25年という年月は、様々な過程と試練を経てその建物の評価が見えてくる年月なのではないだろうか。ひとつの建築の存在が地域社会にとって物理的にも精神的にもプラスに働いているのであれば、それは地域にとっても建築にとっても幸せなことであり、価値のあることである。建築がある意味で経年優化財として年月を超えて大切に扱われることにも繋がる。

 一方で25年という歳月は、建築に物理的にも機能的にも経年変化を引き起こす。
時間の経過と共に建築も設備も老朽化し改修や更新を必要とする部分が現れる。維持管理に手間がかかる、改修工事に割く予算が無い等の理由で建物の劣化が進むケースも近年では多く見られる。また地域社会や利用者にとって建物の存在価値が変化することも起こりえる。小学校であれば、新入生として入学した子供は31歳になり次世代を担う年齢となる。過疎化で大きな学校は不要になっているかもしれない。利用者も管理者も所有者も入れ変わり、求められる機能も変わる可能性も高い。竣工時には関係者は皆幸せな未来を祈念するが、経年変化は様々な場面で起こりえる。そのような変化に対して計画時の関係者の思いやデザインが大切にされ、適切に改修や更新が行われ、無理なく自然に継承されている場合は、建築が地域に確実に根ざし、次世代に受け継がれることが期待できる。
現地審査では、建物の地域の中での親和性、利用状況、維持管理状況の確認と、設計者、管理者、利用者のヒヤリングを通して地域社会や利用者のコミュニティーにおいて、どのように評価されているのかを確認した。

今年選出された25年賞受賞作品は以下の7作品である。
 ・茨城県営長町アパート
 ・いわむらかずお絵本の丘美術館
 ・小国町立西里小学校(現西里テラス)改修
 ・パストラルタウン美しが丘
 ・嵐山カントリークラブクラブハウス 改修
 ・アートプラザ 改修
 ・「ゼンカイ」ハウス

審査委員長 佐藤尚巳