JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.288熊本県民総合運動公園屋内運動広場(通称:パークドーム熊本)
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設計:第一工房・フジタ共同体
監理・改修(〜2015):(株)第一工房
改修(2016〜):株式会社柳澤力一級建築士事務所
熊本県
株式会社フジタ 九州支店
1期:1997年3月 2期:1997年9月
熊本県熊本市
1日中出入り自由な屋根のかかった運動広場である。現地視察時は生憎の雨であったが外周部の軒下空間をジョギングしている人が何人もいる。基本的に施設は一日中市民に解放され中央のアリーナが使用中でも施設の思い思いの場所で自由に体を動かすことのできる、こんなに自由で開放的な施設は珍しい。そもそもの体育館ではなく屋内運動広場を作ろうというコンセプトが素晴らしかった。
またそれを実現した建築家の発想と施工者の技術も素晴らしい。自然光を効果的に利用するために、外周部はガラスの壁、屋根部はテント構造を採用している。屋根は2重膜構造となっており、空気圧で膨張させることで自立させている。ドーナツ状の形状を採用することで高さを抑え、最小限の構造材と空気圧調整によって空間を成立させている。2重膜構造の内部に案内されたが、限られた部材で無理なく大空間の屋根が構成されていることに感銘を受けた。アイデアと技術が結集され、空気膜構造としては秀逸な建築といえる。
広場部分の空気圧調整は不要なので、地上階の外壁は縦軸回転のサッシュで解放可能となっており、中間期と夏季には開放して外気と同じ環境条件とすることが可能である。空調設備、換気設備、照明設備も必要最低限で運用でき、維持管理の負担も軽減されている。竣工後26年が経過し、台風等で被災したこともあったようだが、その都度丁寧に修復し現在も非常に良い状態で利用されている。天候に左右されず利用可能なこと、利用にあたっての特別な制限がないことで長く市民に愛され、利用されてきた施設。修繕修復にも予算を割り当て常に手をかけながら最善の状態を保つ努力を惜しまない行政に対しても賛辞を送りたい。今後も熊本の誇りとして人気の施設であり続けることであろう。
佐藤尚巳