JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.293東京国際フォーラム
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ラファエル・ヴィニオリ・アーキテクツ
東京都
ホール棟建設工事共同企業体:大成・戸田・清水 他
ガラス棟建設工事共同企業体:大林・鹿島・安藤 他
1997年1月
東京都千代田区
東京国際フォーラムは、日本を代表するコンベンション&パフォーミングアーツセンターである。7つの多目的ホール、展示ホール、34の会議室から構成され、音楽、ダンス、演劇、レセプション、コンベンション、見本市などに対応している。
本作は、今もシャープなデザインで時代を感じさせず、東京駅周辺の視覚的なランドマークとなっているばかりでなく、オープンスペースであるプラザを中心としてオフィス街の憩いの場所として親しまれ、もちろん建設の目的である総合的な文化情報施設としての機能を果たし続けている。
さまざまな立場の人びとが貢献して良好に維持されてきたことによって、異なる時代の文化が積層し、建築的価値を増していることに、JIA25年建築賞にふさわしい特質が認められる。
本作は1997年の開館以前から、注目を集めてきた。1985年の都庁の新宿移転決定にともなって旧東京都庁舎跡地の事業計画が進められ、日本で初めてとなる国際建築家連合(UIA)公認による設計競技が行われて、アメリカのラファエル・ヴィニョリ・アーキテクツの案が最優秀作品に決定した。時折しもバブル経済で、日本の国際化が迫られる中、国際的な視野に立って、アーキテクトの立場を尊重した公共建築が実現する。そんな時代の象徴としてまず価値があり、館内の至るところに充分な知恵と資金が投じられている様子を、今も見ることができる。
それぞれのホールが異なる意匠を備え、ホワイエや裏動線などもたっぷりととられ、そして何よりも圧倒的なガラスホールの空間が、訪問者を豊かな気分にさせる。単に機能の充足という面からだけでは測れない文化的な成果を挙げるにふさわしい設計であり、それを施工者や協力者が丹念に実現させ、できあがった形に所有者が敬意を払ってきた成果が、今日までの高い利用率によって証明されているだろう。
時間の経過により、最も秀逸さが際立っていったのが、全体の構成にほかならない。建物の輪郭を敷地周辺の鉄道高架橋と街区から定めた上で、中心部に公共スペースを確保したのである。都民が並木を眺めながら通行可能なプラザは、丸の内エリアがオフィス用途以外にも発展するにつれてさらに輝きを増し、多様に活用されるようになった。このような都市的な建築の実現は、国際的な設計競技の実施と無関係ではないだろう。
東京国際フォーラムは、明治以来、東京の行政の中心であった場所に建設されたことを忘れていない。経済性だけに還元されない公共心が実現させ、公共心を備えた人びとによって今も維持管理されている建築である。
倉方俊輔