日本建築家協会(JIA)は建築家が集う公益社団法人です。
豊かな暮らし、価値ある環境、美しい国をデザインします。
JIAでは、すぐれた建築作品を顕彰し、建築文化のすばらしさや価値を社会に発信しています。
正会員(建築家)はじめ各種会員制度を設けています。
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総評
JIA25年賞は、今年度で17回目となる建築界では比較的新しい賞です。他の賞の多くが竣工直後の建築を対象としているのに対して、本賞は竣工後25年以上の建築を対象とし、その維持管理だけでなく機能の変容や近隣住民との関係などを含めた建築と時間の両方を、25年経過した現在から評価しようとするユニークな賞です。時間の経過という不可避の現象を、どのように未来につなげていくのか。それは21世紀の建築にとって重要なテーマとなっています。 日本全国から応募していただいた作品は、各支部で審査が行われ優れたものが「JIA25年建築選」として選定されます。さらにその中から本部で審査が行われ、特に優れたものが「JIA25年賞」を受賞します。 審査の結果、今年度は4つの作品にJIA25年賞が与えられることになりました。「大倉山ハイム」は高層集合住宅の好例として、さらに分譲マンションという珍しいタイプからの受賞となりました。「ポーラ五反田ビル」はツインコアという積層空間の構造的チャレンジで高名な建築ですが、その意思を引き継ぐ耐震補強と一階ロビーの再生が評価の対象となりました。「ヒルサイドテラス」は、すでに1、2期が2000年に第1回のJIA25年賞を受賞しています。今回はその後に完成した3~6期の受賞であり、作り続けられる建築として21世紀のあり方を予見しているかのようです。「田川市文化エリア」は、社会の変容による機能変化に丁寧な改装と増築によって対応し、地方都市の公共建築のあり方を示しています。 25年という時間は、ここに建築があるという情報から、そこに行くといつもその建築を体験することができるという記憶になる、切り替わりの時期のように思います。それは建築が文化に変容する瞬間です。その変容の評価基準は多様であり、優劣をつけることは難しくエキサイティングで、審査会では今年度も活発な議論が起こりました。そこでは、元の建築のデザインや技術的提案が優れていることや、上手に維持管理していることはもちろんですが、景観など地域的な側面から文化の向上に役立っているか、建築家の思想や哲学をきちんと保っているか、など毎年新しい審査の視点が生み出されています。 JIAは公益社団法人であるため、日本全国から草の根的に良い建築を見つけ、育てる使命もあります。それには本部との支部との密接な連携が不可欠であり、25年賞だけでなく25年建築選の充実も重要です。これらは本賞のこれからの課題です。 情報化社会の面白いところは、個人の感情や地域の記憶も社会の記録にすることができることです。25年賞はクラッシックに見えるかもしれませんが、25年という時間を通して建築を情報から地域の記憶という文化にして、その文化を記録として社会化していく現代的な賞なのです。社会との関係が大きいため、その意味や評価基準も時代とともに変化していくでしょう。
教育・表彰委員会委員長 福島加津也
第17回 2017年度 JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞は、今年度で17回目となる建築界では比較的新しい賞です。他の賞の多くが竣工直後の建築を対象としているのに対して、本賞は竣工後25年以上の建築を対象とし、その維持管理だけでなく機能の変容や近隣住民との関係などを含めた建築と時間の両方を、25年経過した現在から評価しようとするユニークな賞です。時間の経過という不可避の現象を、どのように未来につなげていくのか。それは21世紀の建築にとって重要なテーマとなっています。
日本全国から応募していただいた作品は、各支部で審査が行われ優れたものが「JIA25年建築選」として選定されます。さらにその中から本部で審査が行われ、特に優れたものが「JIA25年賞」を受賞します。
審査の結果、今年度は4つの作品にJIA25年賞が与えられることになりました。「大倉山ハイム」は高層集合住宅の好例として、さらに分譲マンションという珍しいタイプからの受賞となりました。「ポーラ五反田ビル」はツインコアという積層空間の構造的チャレンジで高名な建築ですが、その意思を引き継ぐ耐震補強と一階ロビーの再生が評価の対象となりました。「ヒルサイドテラス」は、すでに1、2期が2000年に第1回のJIA25年賞を受賞しています。今回はその後に完成した3~6期の受賞であり、作り続けられる建築として21世紀のあり方を予見しているかのようです。「田川市文化エリア」は、社会の変容による機能変化に丁寧な改装と増築によって対応し、地方都市の公共建築のあり方を示しています。
25年という時間は、ここに建築があるという情報から、そこに行くといつもその建築を体験することができるという記憶になる、切り替わりの時期のように思います。それは建築が文化に変容する瞬間です。その変容の評価基準は多様であり、優劣をつけることは難しくエキサイティングで、審査会では今年度も活発な議論が起こりました。そこでは、元の建築のデザインや技術的提案が優れていることや、上手に維持管理していることはもちろんですが、景観など地域的な側面から文化の向上に役立っているか、建築家の思想や哲学をきちんと保っているか、など毎年新しい審査の視点が生み出されています。
JIAは公益社団法人であるため、日本全国から草の根的に良い建築を見つけ、育てる使命もあります。それには本部との支部との密接な連携が不可欠であり、25年賞だけでなく25年建築選の充実も重要です。これらは本賞のこれからの課題です。
情報化社会の面白いところは、個人の感情や地域の記憶も社会の記録にすることができることです。25年賞はクラッシックに見えるかもしれませんが、25年という時間を通して建築を情報から地域の記憶という文化にして、その文化を記録として社会化していく現代的な賞なのです。社会との関係が大きいため、その意味や評価基準も時代とともに変化していくでしょう。
教育・表彰委員会委員長 福島加津也