JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.193ポーラ五反田ビル
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林昌二、三浦明彦、大庭拓也(改修)、高橋秀通(改修)/株式会社 日建設計
株式会社 ポーラ
株式会社 竹中工務店
1971年
東京都品川区
ポーラ五反田ビルは竣工当時、両端コア型のオフィスビルのプロトタイプと見なされたものであるが、コア間に渡された38mの鉄骨大梁による支持により無柱のオフィス空間とロビー空間を実現している点でさらに大きな注目を浴びた。当時発表された断面パースに描かれた斜めの昇り庭やそこに浮かんだように見える空間構成、そして写真に映る緑と光に満ちたロビーなどが、柱の桎梏から解き放たれた軽やかさを漂わせて、きわめて強い印象を与えた。
東日本大震災後にロビー天井などいくつかの重要な改修が行われたが、原デザインを敬い保持しようという強い意欲のもと、現在もほぼ元のままの見え方が維持されて使われている。
同じ1971年に竣工した同じ設計者で同じく両端コア型の日本IBM本社ビルがより高密度を求める都市更新の圧力のもと取り壊されてしまった今、この建物がDOCOMOMO Japanの「モダンムーヴメントの建築」の選定を受けた上で現存し、しかも良い状態に維持管理されつつ使用されていることは注目に値する。
進化の速い現代の技術をまとった最新性能のオフィスとの競合やより高密度を求める都市更新の圧力に打ち勝って原デザインを保ったまま生き延びるにはどういう策があるかが問われている。
(六鹿 正治)
化粧品会社の本社ビルとして線路沿いの敷地に建てられた「ポーラ五反田ビル」は、1970年代に建築を学び始めた者にとって既に伝説の建物だった。「ダブルコアシステム」によって無柱ワンルームのオフィススペースを獲得するアイデアと共に、コア間を大梁で飛ばすことで実現したガラスの空間「クリスタルロビー」の写真の印象は鮮烈だった。構造システムから線路の法面と昇り庭の関係までを明快に伝える断面パースも強く記憶に残っている。
それほど印象深い作品ながら、その明快さ故に中を見ずとも了解してしまったのか、今回初めてクリスタルロビーに足を踏み入れた。期待していたその空間は当初の印象のまま美しく保たれていた。グレーペン5mmと磨き板ガラス3mmの合わせガラスであった黒い天井は、黒い鏡面塗装のアルミ板4mmに変更されているが、映り込む鏡像に歪みはなかった。
JRの線路の法面を見ると、真新しいコンクリートの構造体の間にサツキが植えられている。ここには竣工当初、建築主の出資により敷地内の昇り庭に対応するようにサツキが植え込まれていた。JRが法面の耐震改修をする際、ふたたび建築主が要請して実現したという。建築主の強い愛着を感じる逸話である。
(大森 晃彦)