JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.282霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)
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槇総合計画事務所
鹿児島県
株式会社竹中工務店
1994年6月
鹿児島県霧島市
霧島国際音楽祭は、2022年度が第43回を迎えた。霧島高原が、海外の音楽家のリゾート地として知られるようになった時期を今直ちに明らかに出来ないが、その結果として、霧島で音楽祭が行われる様になり、それが国際的に知られる様になったのは1980年代初頭との事だである。この音楽祭の契機は、1980年代初頭との事である。この音楽祭の契機は、彼等が地元のホテルで開いた小さな演奏会であったとの事だから、当初は、本当に小さな音楽会であったはずだ。。それが、徐々に、知られるようになり、それに呼応して規模が拡大し、県規模の音楽祭となり、今日、冒頭の回数を迎える迄の国際音楽祭になった。音楽会が国際化し著名になるに従って、会場規模も音響性能も既存施設の流用では難しくなっていった。ホール建設の背景にはこの様な経緯があった。
こうした経緯が、ホール建設に大変な追風となったであろう事に異論は無かろうと思うが、同時に、設計・施工に関しては、その選定から設計監理・施工管理に至る迄、相応の苦労があったと推察される。
ホール竣工が1994年6月という事だから申請時点で竣工以来28年という事になる。地方に出来た音楽専用ホールと聞くと、その文化的効用よりは経済的負担が話題になりがちだが、このホールに関して、その様な懸念は全く感じられなかった。70%とも言われる驚異的な稼働率が、その文化的役割の大きさを雄弁に語っているからだ。霧島国際音楽祭の会場としての実力が、県下の多様な音楽会・コンクール・発表会等の会場としての利用申請に繋がっているとの事であった。
県・設計者・施工者の苦労は見事に実を結び、その後の誠実な施設管理がホールの持続性を担保している事実に異論を差し挟む余地は無い。残念ながら、よく知られる、形状を工夫しながらの比較的長い残響時間の実現を体験する機会は無かったが、28年間の使用状況を確認すれば充分だろう。建築的にも良く管理されており、25年賞受賞の要件を充分に満たしている。
尚、下記の2点、
③建築の価値を社会に広めてきたこと
⑦未来に向けた長期的な保全計画があること
にはチェックが入っていなかったが、③については、音楽際の盛況ぶりをもって既に満たしている。また、⑦については、日常祥的な管理はきちんと成されているとの評価を示した上で、とは言え、中々積極的な計画が示されないのは公共建築の一般的な傾向なので、その必要性を改めて指摘させて頂いて審査評とする。
内田祥士