日本建築家協会(JIA)は建築家が集う公益社団法人です。
豊かな暮らし、価値ある環境、美しい国をデザインします。
JIAでは、すぐれた建築作品を顕彰し、建築文化のすばらしさや価値を社会に発信しています。
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総評
「JIA25年建築賞」は、その年にJIAの各支部から「JIA25年建築選」として既に選ばれている優れた長寿建築の中から、特に傑出していると審査委員会から評価された建築に与えられる賞である。
「傑出している」とは、概ね新築の建築で競われるデザインを中心とした一般の建築賞の場合とはかなり異なる見方による判断となる。詳細な基準は賞の応募要領の中に記されているが、過去何回かの審査の経験からもう少し噛み砕いた言葉での説明を試みたい。
「25年建築選」の一つになること自体、相当なことなのであるが、その中から「25年賞」として殊更に選ばれるものは次の二点の少なくともいずれかにおいて、より強く注目されるからだと私は見てきた。
・「幸せな建築」としての幸せ度の大きさ
・更なる長寿の願いを込めたくなる覚束なさ
まず「幸せな建築」であるが、長年にわたって所有者にもユーザーにも愛されて使われてきたことがひしひしと伝わってくることである。さらにそういう所有者やユーザーと設計者や施工者が長年にわたって強い信頼関係を維持してきたことが伝わってくることである。
しかし、時代が移り変わり社会や経済が変動する中で、大きな変更を加えることなくアクティブに生き続けるということは、それ自体かなりの困難を伴う。そのため、現在の幸せ度が今後もそのまま続くという保証は残念ながら全くないのが実情だ。
現在の状況をつぶさに観察すると、所有者も管理者も設計者も施工者も何かギリギリの工夫を一所懸命に重ねながら建築を使い続け、「持ちこたえ」させていることが痛い程伝わってくる建築にしばしば遭遇する。決して理想的ではない状況に「ワンチーム」で志を重ね合って力を尽くしているのである。そういう時は本当に心が動かされる。ここで息切れしないように、私たちも思いを思わず重ねてしまう。「願いを込める賞」というのがあってもよいのではないか。もちろん除却前の記念にならないことを見極める覚めた意識もしっかり持った上でのことであるが。
応募作の中には新築から半世紀経っても堂々たる存在感を誇っているものもあり、25年の評価では短いという見方もある。しかし社会の加速度的変化の中では、25年はその後のあり方を決めるかなりきわどいクリティカルな時期であるようにも思える。
今年は、明らかに強い枠組みにあって長期的に安心なものよりも、かなりきわどいバランスの中で所有者・運営者らの知恵でギリギリ持ちこたえているものが多く選ばれることになった。これを機により確実な長寿への模索が行われることを期待したい。
第19回 2019年度 JIA 25年賞・JIA 25年建築選
「JIA25年建築賞」は、その年にJIAの各支部から「JIA25年建築選」として既に選ばれている優れた長寿建築の中から、特に傑出していると審査委員会から評価された建築に与えられる賞である。
「傑出している」とは、概ね新築の建築で競われるデザインを中心とした一般の建築賞の場合とはかなり異なる見方による判断となる。詳細な基準は賞の応募要領の中に記されているが、過去何回かの審査の経験からもう少し噛み砕いた言葉での説明を試みたい。
「25年建築選」の一つになること自体、相当なことなのであるが、その中から「25年賞」として殊更に選ばれるものは次の二点の少なくともいずれかにおいて、より強く注目されるからだと私は見てきた。
・「幸せな建築」としての幸せ度の大きさ
・更なる長寿の願いを込めたくなる覚束なさ
まず「幸せな建築」であるが、長年にわたって所有者にもユーザーにも愛されて使われてきたことがひしひしと伝わってくることである。さらにそういう所有者やユーザーと設計者や施工者が長年にわたって強い信頼関係を維持してきたことが伝わってくることである。
しかし、時代が移り変わり社会や経済が変動する中で、大きな変更を加えることなくアクティブに生き続けるということは、それ自体かなりの困難を伴う。そのため、現在の幸せ度が今後もそのまま続くという保証は残念ながら全くないのが実情だ。
現在の状況をつぶさに観察すると、所有者も管理者も設計者も施工者も何かギリギリの工夫を一所懸命に重ねながら建築を使い続け、「持ちこたえ」させていることが痛い程伝わってくる建築にしばしば遭遇する。決して理想的ではない状況に「ワンチーム」で志を重ね合って力を尽くしているのである。そういう時は本当に心が動かされる。ここで息切れしないように、私たちも思いを思わず重ねてしまう。「願いを込める賞」というのがあってもよいのではないか。もちろん除却前の記念にならないことを見極める覚めた意識もしっかり持った上でのことであるが。
応募作の中には新築から半世紀経っても堂々たる存在感を誇っているものもあり、25年の評価では短いという見方もある。しかし社会の加速度的変化の中では、25年はその後のあり方を決めるかなりきわどいクリティカルな時期であるようにも思える。
今年は、明らかに強い枠組みにあって長期的に安心なものよりも、かなりきわどいバランスの中で所有者・運営者らの知恵でギリギリ持ちこたえているものが多く選ばれることになった。これを機により確実な長寿への模索が行われることを期待したい。