JIAの建築賞
JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.231富山県こどもみらい館
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設計者:
株式会社 環境デザイン研究所
建築主:
富山県
施工者:
熊谷組・砺波工業・山本建設JV
竣工年:
1992年7月
所在地:
富山県射水市
講 評
この施設は、設計者仙田満が、若い頃から殆ど半世紀に渡って、その計画から現在に至る迄、献身的に携わってきた富山県の県民公園太閤山ランドの一角に1992年に竣工した建物で、その姿は建築というよりは巨大な遊具という趣の施設である。設計者が研究し、提唱してきた遊環構造理論が適用された初期のこどものための施設で、開館以来、常に年間20万人前後の利用者があり、リピーターがその7〜8割を占めるという衰えを知らない活気に満ちた施設である。 設計者によれば、遊環構造理論の契機の一つは、学生に遊具を作らせ、それをこども達の前に並べると、明らかにこども達が多数集まる遊具とそうでない遊具に分かれることから、その理由を考え始めたところにあったとのことである。そして、次第に、好まれる遊具には、幾つかの共通点があることがわかってきた。この時、仙田は、子供のための空間は、こどもにとって魅力的でなければならないと考え、一般的な計画理論や性能論とは別の世界に踏み出した。私の様な、技術論的な輩の解説では、設計者が最も大切にしている機微がこぼれ落ちているに違いないのだが、以上の様な基本的なスタンスの中で、実践と試行錯誤を繰り返しながら構築され、恐らくは、今も少しずつ変化を遂げている設計手法が、この遊環構造理論なのだろうと想像する。 屋外遊具の建築性能上の困難さは、折々の屋外環境とどの様に対処するかにある。この点については、設計者から、近年の成果を背景に、遊具全体を覆う屋根が設けられれば、全体を屋内化しなくても、十分な改善が見られる旨の御話を伺った。確かに、近年の作品は、この施設の様な遊具然とした外観よりは、より建築的になりつつあるかにも見えるが、それ故に、この施設の、天真爛漫な迄の遊具然としたデザインには、大切にしたい初源的な明るさがある。それが、施設管理者の気概の糧になっている。 最後に、営繕屋としての妄想をお許し頂きたい。年間20万人近い利用者の7〜8割がリピーターであるという事実を支えているのは、間違いなく、何度も来たいと願うこども達である。ならば、是非ともこの施設に、設計者自ら、或いは、その志を継ぐ人々が、若き日の設計者の志を見事に包み込み、しかし、その魅力を決して失わせない、そして、ここが最も重要な点なのだが、こども達にとって魅力的な屋根の構想とその実現を期待したい。登録文化財までまだ、あと25年である。 (内田 祥士) |