世の中の建築賞のほとんどは、建築を新築から1-2年以内の状態で評価するものです。美しく機能的で社会的メッセージが感じられる新しい建築の門出を皆で高らかに祝うことは本当に心躍るものです。
しかしながら仮設的なものを除いて、建築は長く使われることを前提に設計され建設されることが基本です。門出を祝福された建物が、その後風雪に耐えてしっかり存在しえているかということが大いに気になります。建築の真の評価は、それぞれの事情はあるものの、長年月使われていく過程の中でこそ露わになっていくものではないでしょうか。
JIA25年賞は、竣工後25年以上経った建築の中から選ばれるものです。
選考基準を満たすためには、建築の所有者、設計者、施工者、管理者が力を合わせて建物に関わることが欠かせません。すべての関係者から長く愛され使い続けられて初めて得られる賞なのです。
JIA25年賞は、文化や環境を大事にする私たちの社会にとって、今後ますます注目される建築賞になるのではないでしょうか。
第12代JIA会長・2021年度審査委員長 六鹿 正治