Q: |
JIAの考えている建築家資格制度とは。 |
A: |
JIAが目指す建築家資格制度とは、わが国にも世界的に見て、同じレベルの建築家資格を創ろうというものです。わが国では、1級建築士資格が、建築の設計・監理をするものに対する国家資格になっていて、建築設計・監理の業務に対する独占権が与えられています。しかしながら、この1級建築士制度は、職能分化に対する対応、明確な責任の所在や試験制度など、制度が定めている点に不備があるといわざるを得ません。
世界の建築家で構成する団体、世界建築家連合(UIA)は、建築家資格に対する基準を持っています。わが国の資格も、わが国の固有な風土に立脚しつつ、この基準と同等なものとする必要があると考え、新しく建築家資格を作ろうとしています。そしてこの新しい資格を国家資格とするためには、建築士制度を定めている建築士法を改める必要があると考えています。 |
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Q: |
建築家資格をとるにはどのような条件があるのか。 |
A: |
UIA基準では、5年の専門教育(大学教育)、3年の実務訓練を経て資格審査(試験)を受けることができ、審査に合格して建築家資格が与えられます。そして資格の更新は継続職能研修(CPD)を受けていないとできません。
わが国では、4年の大学教育を終えて2年間の実務経験があれば1級建築士試験を受けることができます。実務経験について言えば、大学院に行っていても、あるいは実務に従事していた証明をする必要はありません。
JIAは他団体に協力して資格要件のわが国の基準をUIA基準に合わせるようにしようとしています。現在、日本建築学会では、大学の建築家教育を4(学部)プラス2年(大学院)の6年にすることを進めています。教育内容も実務教育を多くするために、建築家を多く大学教育の参加させる必要があり、この点で協力をしたいと考えています。一方、JIAはこれまで実務訓練を試行してきました。実務訓練とは、建築実務に必要な経験を一通り経験させ、その証明書を発行しようというものです。今後本格的にこの制度の普及に努めます。また、CPDは他の団体もお互いに協力して実践をはじめています。JIAは試行を終えて本格実施を始めました。
新しい建築家資格制度を創るにあたって、上記のUIA基準に見合う教育・実務訓練・審査の制度が完成するまで待つというのも現実的ではありません。JIAでは、建築家資格制度をスタートさせるにあたって、現在の1級建築士資格者を対象に資格取得後5年以上の実務経験者を審査し資格を与える暫定的な制度を採用します。経験年数を5年と定めたのは、これであれば、UIA基準と同等以上と考えられるからです。 |
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Q: |
建築家資格を取ると外国で仕事ができるのか。相互承認とは何か。 |
A: |
国内の資格では、海外の仕事はできません。外国の仕事ができるようになるには、その国の資格をとらなければなりませんが、それに変わる手段として、相手国(相手地域)との資格の相互認証をすることによっても可能なようになりつつあります。資格の相互認証は、現在WTOがサービス貿易の自由化を促進しているために建築家資格についても各国間で始まっています。今、アジア圏で始められているAPECアーキテクト資格制度はそのひとつの動きです。
資格の相互認証は、これまで、EU圏内、EUとUSA、USAとカナダ、メキシコで話合いが進められています。また中国とアメリカの間では、中国の資格制度を新しくUSAと同じにすることが進められています。韓国とアメリカでも相互認証の話しが進めれていて、韓国では既に大学教育は4年制を5年制に改め、建築家協会(KIA)と建築士会(KIRA)がひとつの団体になって活動が開始されました。相互認証をしやすくするには、ある程度両国間の資格制度の同等性が必要です。 |
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Q: |
資格制度とAPECアーキテクトの関係は。 |
A: |
直接の関係はありません。APECアーキテクト制度は、APEC諸国の間にUIA資格基準に基づく共通の資格を創ることでスタートしました。しかし、話し合いの過程で、各国の制度がその国固有のものが多く、同一のものにすることが難しいと判断され、各国の建築資格取得者(日本では1級建築士)で、資格取得後7年の実務経験をしたものを対象者として位置付け、2国間相互認証により相互に資格を認め合う方式になりました。JIAで進めている建築家資格も、日本建築士会連合会の設計専攻建築士資格も1級建築士資格取得後5年で資格審査をすることにしていますから、この国内資格では、不十分で、さらに2年の実務経験が必要になります。 |
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Q: |
UIA基準と同等の必要性とは。 |
A: |
UIA基準は建築家の資格資格制度に関す基準を教育、実務訓練、資格登録、CPDなどに関して決めています。わが国の基準を作るにあたってこのUIA基準と同等にする必要性があると考えています。というのは、制度に基づいて誕生する建築家のレベルが国際レベル以下ということは、サービスを受ける国民にとって不利なことですし、より優れた建築家が海外から参入する理由にもなります。だからと言ってすべてをUIA基準と同じにする必要はありません。建築はそれぞれの地域に固有なものであり風土に根づいたものですから、必要とされる建築家の能力も固有のものがあって良いはずです。例えば、わが国の建築家は地震に対しての高い専門知識を必要とすることがあってよいはずです。これらの知識は教育や経験を通じて培われます。「UIA基準と同等」と言う意味は、UIA基準と同じ基準を導入するということでなく、わが国の風土に基づいたものであり、かつ世界が認めるレベルであることが説明できるレベルと言う意味です。 |
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