JIA新人賞

第23回 2011年度 新人賞

※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。

受賞作品:ヨコハマアパートメント

 

profile 西田 司
西田 司(にしだ おさむ)(オンデザインパートナーズ)

 

1976年 神奈川県生まれ
1999年 横浜国立大学卒業
      スピードスタジオ設立
2002年 東京都立大大学院助手(-07)
2004年 オンデザインパートナーズ設立
2005年 首都大学東京研究員(-07年)
      神奈川大学非常勤講師(-08年)
      東京理科大学非常勤講師(-09年)
2007年-2009年
      横浜国立大学大学院(Y-GSA)助手
2010年 東北大学非常勤講師

 

中川 エリカ
中川 エリカ(なかがわ えりか)(オンデザインパートナーズ)

 

1983年 東京都生まれ
2005年 横浜国立大学卒業
2007年 東京藝術大学大学院修了
同  年  オンデザイン

 

受賞暦
2000年 東京建築士会「住宅奨励」受賞:(西田邸)
2001年 TEPCO快適住宅コンテスト入賞:(ストリートインハウス)
2002年 日本建築学会作品選集:(葉山の別荘)
2003年 東京建築士会住宅賞:(茅ケ崎の家)
2004年 街並み100選:(西田邸)
2004年 Forest More 優秀賞:(辻堂の家)
2005年 神奈川建築コンクール 優秀賞:(カレイドスコープハウス)
2006年 グッドデザイン賞:(伊豆アネックス)
2008年 グッドデザイン賞:(ムシェット夏の家)
2010年 ディスプレイデザイン賞:(六本木農園 FARM)
2011年 JCDデザインアワード 銀賞:(六本木農園 FARM)
2011年 日事連建築賞 小規模建築部門 優秀賞:ヨコハマアパートメント

受賞作品

オンデザインパートナーズ

Photo:鳥村 鋼一

昨年、震災がおこりました。有事の際人々を支えたのは、物理的な構築物だけではなく、目に見えない人と人のネットワークであったように思います。そのような事態に直面し、非日常への対応策を考えるだけではなく、何より日常を強化することが重要なのではないかと感じることがあります。そこで建築ができることは、どのようなことでしょうか。

ヨコハマアパートメントは、街全体が路地のような雰囲気の場所に建つ木造賃貸アパートです。4戸の専有部屋の下に、天井高さ5mで半外部の共有部(通称:広場)があります。小さな建築での人のあつまり方を考えたいと思い、4方に大きな開口を持つ、用がない人にとってもオープンな建ち方としました。広場は敷地境界上にビニルカーテン一枚引かれただけの半外部であり、建て込んだ街への風通しも良くしています。

竣工して数年が経ちますが、私たちは月に一度開かれる入居者会議に参加したり、建物のメンテナンスをサポートするなど、竣工後の運営にも継続して関わっています。ヨコハマアパートメントの考察を続ける中、仲間や活動や出来事という、ふわふわとした、そのままでは継続しにくい状況が、建築という力によって定着し、持続可能なものに昇華されたのだと感じることがあります。

街の一粒として計画された建物は、物理的に開くだけでなく、人が集まること/街に寄与することによって、入居者の共有部から拡張された公共的性質を持ちはじめています。ひとつの場所で起こる、種類もちがう複数の出来事は、木賃アパートの共有部であるにも関わらず、街の広場のように、とても自由で、不確定です。入居者も、街の人たちも、この建物を介して、日常そのものの幅を広げ、また、人があつまることの可能性や目に見えないネットワークが強化されて行くことを目の当たりにしています。このような状況は、都市とは日常の延長そのものであること、公共とは私たちでもつくれるものであることを示すことだと感じています。