第23回 2011年度 新人賞
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受賞作品:ヨコハマアパートメント
西田 司(にしだ おさむ)(オンデザインパートナーズ)
1976年 神奈川県生まれ |
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中川 エリカ(なかがわ えりか)(オンデザインパートナーズ)
1983年 東京都生まれ
受賞暦 |
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Photo:鳥村 鋼一
昨年、震災がおこりました。有事の際人々を支えたのは、物理的な構築物だけではなく、目に見えない人と人のネットワークであったように思います。そのような事態に直面し、非日常への対応策を考えるだけではなく、何より日常を強化することが重要なのではないかと感じることがあります。そこで建築ができることは、どのようなことでしょうか。 ヨコハマアパートメントは、街全体が路地のような雰囲気の場所に建つ木造賃貸アパートです。4戸の専有部屋の下に、天井高さ5mで半外部の共有部(通称:広場)があります。小さな建築での人のあつまり方を考えたいと思い、4方に大きな開口を持つ、用がない人にとってもオープンな建ち方としました。広場は敷地境界上にビニルカーテン一枚引かれただけの半外部であり、建て込んだ街への風通しも良くしています。 竣工して数年が経ちますが、私たちは月に一度開かれる入居者会議に参加したり、建物のメンテナンスをサポートするなど、竣工後の運営にも継続して関わっています。ヨコハマアパートメントの考察を続ける中、仲間や活動や出来事という、ふわふわとした、そのままでは継続しにくい状況が、建築という力によって定着し、持続可能なものに昇華されたのだと感じることがあります。 街の一粒として計画された建物は、物理的に開くだけでなく、人が集まること/街に寄与することによって、入居者の共有部から拡張された公共的性質を持ちはじめています。ひとつの場所で起こる、種類もちがう複数の出来事は、木賃アパートの共有部であるにも関わらず、街の広場のように、とても自由で、不確定です。入居者も、街の人たちも、この建物を介して、日常そのものの幅を広げ、また、人があつまることの可能性や目に見えないネットワークが強化されて行くことを目の当たりにしています。このような状況は、都市とは日常の延長そのものであること、公共とは私たちでもつくれるものであることを示すことだと感じています。 |