展望台とトイレは子供たちがキャンプを楽しむ青少年野外活動センターにある。立地は山頂と山裾、敷地の奥と入口と対称的であるが、木という素材を使って、建築と自然が呼応した新しい地形をつくりたいと考えた。幾つかのレベルのテラスやブリッジは、それまでとは違った視線を生み出すことを意図している。
展望台
展望といえば遠くの景色を眺めることであるが、ここでの視界はあまり開けていない。僅かに近くの農村集落が見えるぐらいである。そこで利用者が休憩したり遊具のように楽しんだりする建築となった。
自然の中での建築のありようとして、その存在を明らかにし、自然と対話できるようなものをと考え、単純な構成の幾何学形とした。垂直と水平に広がる視線を形にした縦長と横長のふたつの架構を組み合わせ、それに板を透かして張り、床と壁をつくった。階段は木を井桁に組んで添わせている。接合は継手仕口ではなく、穴をあけて鉄パイプを差し込みそこに接着剤を注入して固めるホームコネクターという製品を用いて剛に接合している。
水平ルーバーがつくるストライプの面が垂直にのびる木立の線と交差して点となり、それが光と影が交錯する森の中に滲み込む。さらに内からは架構のフレームで風景が切り取られ、ルーバー状の床と壁から木々が透け、光が漏れ、風が擦り抜ける。外から内を介して外へ、森と一体となった広がりをもつ。また遊具以上、建築未満という素形に、子供たちの想像が広がることを期待している。
トイレ
ゲートから少しセンターに入った山裾の緩やかな斜面が敷地である。ここに隣接した小高い丘にはセンターを管理する本館がある。その軸線と平行に道からテラス、ブリッジ、トイレを山に向かって順に並べ、お互いの間合いをはかるためにスクリーンや中庭を介在させている。テラスは集合場所や休憩所として、ブリッジはトイレとテラスとのクッションに利用している。
スケールを小さくし、多様な利用に対応するために、トイレは3つのユニットによる分棟とした。ひとつのユニットは手洗いとブースと手洗いがセットになっている。道からの視線を受ける2面は壁で遮断し、隣棟に面した開口は木のスクリーンで透かし、視線が自然林でカットされる山側は開いている。そして対角線上に勾配を持つ方流れ屋根で覆った。それぞれのユニットはブリッジにそって中庭と交互に等間隔に配した。さらに地形の傾斜にそって少しずつ床レベルを変化させている。
森を生かす
展望台とトイレの一部、そしてセンターの修景は大阪府森林組合三島支店が工事を行った。三島支店はテーブルやベンチなどの家具づくりから始め、徐々にパーゴラや古屋などの小さな建築づくりに手を広げている。海外から輸入される安い木材に押されぎみの国産材に消費を引き戻し、森林事業の新しい分野を開拓するのが狙いである。このような木の建築づくりが身近な森を生かす一助になればと考えている。
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