日本建築家大賞

2011年度 日本建築家協会賞 

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杉浦邸/多面体 岐阜ひるがの

設計者:横河 健(横河設計工房)

杉浦邸/多面体 岐阜ひるがの外部
撮影:新建築社写真部
杉浦邸/多面体 岐阜ひるがの内部
撮影:新建築社写真部

横河 健

横河 健

 岐阜・ひるが野の小高い丘の上にその土地がある。敷地に立つと東から
南にかけて180度以上のパノラマが広がっていて、美しいが故に冬には辺
り一面雪に覆われる気候の厳しい土地である。積雪は優に3Mを超えるこ
とから、建築のフットプリントを小さくしてピロティー状に全体を持ち上げる
構想は、敷地を初めて訪れたときから持っていた。すっくと立つ姿は誇らし
げに見えるが、実は雪のためだ。近くにスキー場があるくらいの豪雪地帯な
のである。

建築はなだらかなスロープを持って、丘の中腹に位置させる・・・下階は
小さく、玄関ホールから階段の上がり口のところで微妙に角度が振られて
いるために、中に入ると上階の様子は分からず、ただ明るさに誘われる感
覚を際立たせている。上階・多面体の屋根の下は一室空間であり、パブリッ
クな生活空間である主室とプライバシーの高い寝室エリアまでが多面体の
屋根によって全て包まれているのだ。

多面体の下、平面形に微妙な角度をつくっているその中心には「環具」と呼
ばれる水廻り設備コアーがあり、主室と寝室エリアとの二手に分かれ、その
環具からそれぞれのテリトリーに分節されている。環具には相互のプライバ
シーを保つための引き戸が隠されていて様々なシチュエーションにそって可
変する。そのため、バスルームも露天風呂のような様相もつくることが出来
る。さらに、環具BOXの上には小さなロフトがあって畳が敷かれ、面積は小さ
いが全体を多面体の屋根が覆っているので、空間に包まれた感覚は巨大だ。
多面体の空間は包まれ感と共に音響効果としても成功したように思う。
横河 健