2010年度 日本建築家協会賞
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木材会館
設計者: | 山梨 知彦(日建設計) 勝矢 武之(日建設計) |
撮影:野田東徳 |
撮影:nacasa&partners |
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東京の木材問屋組合の会館の移転に伴うプロジェクトである。 都心において木を用いた建築の可能性を切り開き、需要が低迷する国産木材の建材の利用を推進すべく、法規や工法などの可能性を検証していった。特に障害となる法的制限に対しては、避難安全検証法を用いて内装不燃の制限を全館にわたって緩和すると共に、耐火検証法と構造の評定を受けることで、構造材や外装材としても木を使用する道を開いた。 空間構成については、建物の過半を占めるオフィススペースを構築するにあたり、構造や設備やサーキュレーションを外周部に機能や方位に応じて配置して半屋外の空間とし、これによりワークプレイスを囲い込む2層の空間構成とした。特に広場に相対する西面は、奥行きのある木製のテラスを設けることで、外部環境に対するバッファーゾーンを構成し、全体を木製のポーラス(多孔質)なスキンとしている。深い軒先が日差しや雨を遮り、中間期に快適な半屋外空間を提供し、「木の中で暮らす」ような現代の「縁側」空間を作り出している。それは日本型の温暖湿潤気候に適合する新しいスキン(境界空間)の試みであり、そして何よりこうした木を用いた共用空間により、人々が快適に暮らし、新たなアクティヴィティや街との関係を築いていくことが企図されている。 都心の建築で自然に木材が使われているような未来の街づくりに向けて、こうした試みがささやかな一歩となることを期待している。 |
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