日本建築家大賞

2010年度 日本建築家協会賞 

※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。

広島市民球場

設計者: 仙田 満(仙田満+環境デザイン研究所)
奥田 實(奥田建築事務所)
佐藤 尚巳(佐藤尚巳建築研究所)
金箱 温春(金箱構造設計事務所)
広島市民球場 外観
撮影:
広島市民球場 内部
撮影:

仙田 満

仙田 満

奥田 實奥田 實
佐藤 尚巳佐藤 尚巳 金箱 温春金箱 温春
新球場は広島駅より東側、旧ヤード跡地と呼ばれる約11haのほぼ中央約5haのところに位置している。33000人収容の球場は「広島のまちと人を元気 にする球場−ダイナミックボールパーク」が目指され、そのため「街に開かれた球場」がコンセプトである。プレイヤーよりも観客を重視した観戦しやすい球場 は非対称形であり、JR在来線、新幹線側からも球場の内部が見えるという開放型のスタンドの構成になっている。駅から800mで球場の端に到達するが、長 さ200m、幅10mのスロープをのぼり、高さ8mのレベルに一周600mのメインコンコースが回っている。これはこどものあそびやすい空間の構造理論 『遊環構造』を応用した回遊路である。この600mの円環に27種類の多様な観客席とショップが取り付き、球場を楽しめる装置となっている。
厳しい設計工期、建設行程の中で合理的な架構が追求され、メインコンコース下部は現場打ちコンクリート、上部はプレキャスとコンクリートによる主架構に鉄 骨を補助的な架構として使うことにより、デザイン的にも多様な形状の観客席を生み出すことができた。
施工にあたった五洋・増岡・鴻治建設工事共同企業体、カープ工事にあたった鹿島建設をはじめ、多くの関係者のアイディアと努力の結集により実現できた。ま た、クライアントの広島市、指定管理者のカープ、そして市民、地元マスコミの協力も大きく、本球場は『夢の器』と称され、その成果は前年度比最高190% にも増えた集客力や、地域に対する経済波及効果160%にあらわれている。
今後、球場周辺4.4haの開発や、駅から球場までの賑わいの都市開発が進み、それと連動した「進化する球場」として展開していくことになるだろう。戦禍からの復興のシンボルであった広島市民球場の伝統を継承できたことを喜びたい。