第17回環境建築賞 総評
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今年の募集要項の中で「自然と共にある生活」というテーマで募集を行ったところ、大変多くの力作が集まった。特に一般部門では応募数も多く、また提案の質もかなり高かった。一方、住宅部門については、例年と比較して応募数も少なく、全体として課題が残る結果となった。
入選した作品に共通するのは「環境に対する独自の答え」を持っていることで、環境建築賞のレベルが確実に上がってきていると実感する。建築が建っている土地や環境の良いところを深く探究し、その種を掘り起こし、設計と現場監理の過程でじっくりと育てていくという努力の過程が見えてくるものが高い評価を受けた。実は、このことは規模には関係がなく、また都市部か地方であるかも関係がない。「いかに土地へ根ざすか、どうアンカリングするか」が所言的な課題である。土地固有の解答は個別解ではあるが、少し角度を変えれば一般解にも通底するような解放系の解であればなお良く、将来への発展につながることを大いに期待したい。 一般部門では、最優秀賞を1点、優秀賞4点を選出した。現地審査へ進んだ作品は、例年と比較しても質が高く、どの作品が優秀賞になってもおかしくない高レベルであったため、例年3点を優秀賞として選出していたが、今年は4点を選出した。
一般部門と言ってもその範囲は広く、低層の研究所、地方銀行の支店から中小オフィス、さらに超高層の巨大複合施設などまで広がり比較することはかなり難しかった。公開審査で最優秀賞を選出する際にも、「HEXAGON/Aron R&D Center」と「あべのハルカス」が一時最終投票段階で同点となるなど、最優秀作品から入選作品までほとんど僅差であったと言っていい。
住宅部門については、応募数が例年に比べ少数に留まった。最優秀賞は、「里山長屋」というタイトルでまさに今年のテーマである「自然と共にある生活」に対し真正面から捉え、環境的なライフスタイルを住宅の作り方、日々の暮らし方、エネルギーの使い方まで一気通貫で提案しており独自の主張があり優秀賞となった。もう一歩建築空間としての新しい提案につながれば最優秀賞になっていたであろう。住宅部門については、(ある意味一般部門もそうであるのだが)環境的な数値にこだわらず、独自の環境に対する考えを自由に提案してほしいと考えている。環境に配慮し、人のための快適な空間とは本来どうあるべきなのかを根本から考え直すことを主眼とし、来年度から住宅部門については支部推薦も加えるなどの新しい応募方法について提案する必要があると感じた。 審査委員長 安田 幸一
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