第15回環境建築賞 総評
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JIAが他の建築関連4団体とともに、「地球環境・建築憲章」を制定したのは2000年。長寿命、自然共生、省エネルギー、省資源・循環、継承を課題とし、具体化する活動が始まった。地球温暖化問題に対応すべく、環境負荷の小さい建築が強く求められるとともに、新しい自然観や身体感覚に基づいた建築が求められてきた。3.11を経て、人間と自然との関係の再構築は、環境建築のもっとも重要な課題と考えられるようになった。際限のないエネルギーと資源の供給を前提としてきた20世紀の建築がどのように変わることができるのか、変わらなければならないのか、近未来の持続可能な社会の創造にむけて、「社会ストック」「都市・地域の活性化」「居住環境」にわたる幅広い提案を、このJIA環境建築賞は求めてきた。気候風土、文化、資源、経済に即した地域との共生が求められて来たと言えるであろう。
15回目を迎えたJIA環境建築賞への応募は、住宅部門が13点、一般建築部門が29点であった。応募にあたって「環境データシート」の提出が求められるが、その内容が充実してきたのも近年の特徴である。審査の準備段階で、「JIA環境建築賞タスクフォース」がこのデータを読み解く。その結果を参照しながら、第1次審査で一般建築部門7点、住宅部門4点を選出した。第2の審査段階は、建築家と技術家とのペアで構成されるチームによる現地審査である。現地でわかることが多いのも、環境建築ならではのこと。地域に溶け込んで活躍する建築家の熱意も伝わる。その報告会を経て、11月22日に公開審査会が開かれた。最初に、設計者がプレゼンテーションを行い、その後に、審査員が議論をしながら受賞作品を決めていくやり方である。審査員が現地で考え、また感じたことを設計者当人の前で示しつつ、委員が相互に議論を行いながら賞の選定を行う。この公開審査の形式は前回からであるが、議論百出で、もっと多くの会員や一般の方にも参加いただきたいと思うほどである。環境建築に対する理解も深まるのではないだろうか。公開審査を経てあらためて感じることは、環境建築の評価の文脈の多様さである。公開審査の意義は、多様な評価の在り方そのものを議論することにもあると思えるからである。 省エネルギーという視点から見ると、室内の気候制御が大きな課題になるが、この課題に対する解決の方向が2分化する傾向にあるように思われる。ひとつは、徹底した設備技術システムの高効率化・洗練に向かう方向である。
まさにスマートという形容がふさわしい方向だ。安定した室内気候を求めるとき、変動する外界の自然は時に障害ととらえられる場合があるが、この障害を除去するため外界を徹底的に遮断する設計手法がある。均質で安定した室内気候を効率的に制御しやすいというメリットもある。もう一つの傾向は、変動する外界のポテンシャルを積極的に活用しようとする方向である。太陽や風といった自然エネルギーが熱や光の源として導入されるとともに、その変動が室内空間の活性化を促すと見なす。いずれの方向であっても、消費されるエネルギーが同一であるとすれば、省エネルギーの評価は等しいが、室内空間の質(広義の快適さの質)の評価は異なる。オフイス空間における知的生産性の向上のためには、自然の変動が感じられた方がよいとの見方もある。これは、一つのジレンマであり、これをどのように解き、解くかで設計の方針も変わってくる。言い換えれば、この二つの方向のバランスをどのように解くかが設計上のキーポイントとなるということだ。もちろん、地域の気候によって、また、ビルディングタイプによってバランスのとり方も変わってくる。
一般建築の優秀賞となった「清水建設本社ビル」は放射冷暖房システムをはじめとするオフイスビルの先端的エネルギー技術の洗練が卓抜であった。「長岡造形大学展示館MaRouの杜」は美術館ということもあり、自然の光と人間の感覚へのアーティスティックな配慮が魅力的であった。六合エレメック本社ビル」では、外界に開き、自然風を導入する手法とその造形への反映が評価された。 それぞれの解決手法は三者三様であり、対照的であった。 住宅部門で最優秀賞となった「NAVI STRUCT HOUSE2」は、狭小な敷地でありながら、積極的に外界との接点を設け、光や熱、風の変化を考えたダイナミックな空間構成が評価された。優秀賞の「海南の家」は、むしろ逆に、室内の安定さを優先させた解き方が、居住者のライフスタイルにふさわしいとして、評価された。入賞となった「長岡の住宅」「雨やどりの住宅」はそれぞれの厳しい風土における挑戦的な試みが評価された。 全体として、省エネルギー・省資源にとどまらない多様な試みが印象的であった。とはいえ、「環境データシート」に示される定量的な評価が有効であるのは論をまたない。建築家と技術家の連携がますます重要になっている。入賞作品についての個々の講評からも環境建築の多様な傾向を読み取っていただきたいと思う。 審査委員長 小玉 祐一郎
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