JIA環境建築賞

一般建築部門 優秀賞

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陸別小学校

 
設計者: 菅野 彰一(北海道日建設計)
小谷 陽次郎(北海道日建設計)
廣重 拓司(北海道日建設計)
建築主: 陸別町
施工者: 萩原・朝倉・佐藤経常建設共同企業体
講評:

陸別町は零下30℃にもなる日本で最も寒い町であり、この厳寒の環境への対応が否応なく求められる。さらにこの20年間に、多くの公共施設が造られたが、それらによる町の風景が、どこまでも伸びようとするかのような水平線的デザインが共通し、美しい風景となって特徴づけられてきた。陸別小学校は既存校舎を使いながらその北側に中央管理・特別教室棟を、南側に教室棟を配置し、西からの通学路に沿って体育館との連絡路を整備した。 中央棟内部の3次元に膨らんだ集成材格子梁の空間は見事である。あまり高すぎない天井を入り口、図書室、音楽集会などの活動の集約する3つの部分を膨らませ、単純な凸面でなく、複雑な空間形状を創り出している。さらにこの多目的ホールに面する音楽室が間仕切りを開放すると舞台となってイベント時には空間が変化し、思いがけない楽しい空間体験をもたらしてくれる。教室棟はこれに比して単調な6教室とオープンスペースの連続した短冊状の校舎であるが、プリミティブな空間の力が強く訴えかけている。温熱効果として主張している教室棟南側の地中熱利用は距離、深さともにあまり効果は期待できないことから改善が必要とされる。隣の保育所との連続水平空間の風景が先に述べた陸別の町の景観特徴をさらに高めていることも評価された。

  (中村勉)