田畑が広がるのどかな郊外の一画にあって、設計者の７８歳のご母堂が一人でお住まいである。南側には敷地より一段高い生活道路に近接する。走行する車の少ないこの道からは、覆土された大きな屋根が見え、低い軒をくぐるように室内に入る。玄関もインテリアも小柄な住み手のスケールに合わせた配慮が心地よい空間だ。居間の北側にはテラス越しに田んぼが広がり、風が抜ける。十分な断熱を施し、冬は床暖房でほどほどに室温を上げ、あとは炬燵で過ごされるという。住まい方に合わせた合理的な設計だ。床下空間を生かした冷暖房方式は初の試みで、改善の余地があるという設計者の弁には同感。道を通る子供たちの気配を感じ、季節の変化を楽しむ、地域に溶け込んだような住宅だ。