第8回環境建築賞


 総評 審査委員長 野沢 正光
 
今年度、特徴的なのは新築の省資源建築ばかりでなく多彩なタイプの環境建築が登場したことであった。もちろん最新の環境技術といっても様々な工夫があり一律なものではないが、往々にカタログ化した様々な要素技術のアセンブリに終わっているものを見せられることが既視感を伴うものとなっていることもある。その中でさすがに自社の本社ビルでの日建設計の様々な試みに感心した。星のやの主要な熱源が新たに掘削した温泉水の地熱と大正期に設置された古い水力発電所であることに驚かされた。豊富な水による景観が発電所の沈砂池によるという必然も見事であった。長く使い続けてきたプラントの活用はうらやましくもある。他に緑樹帯保全による建築と景観の両立などにも目を引かれた。
また既存の耐震などのための補強、長寿命化を建築のほかの質の向上につなげるいくつかのプロジェクトに見るべきものがあった。解体+新築でなく再生により使い続けることはきわめて有効に資源使用量削減に資する。
住宅建築で今年も最優秀賞があった。きわめて原則的に見えるダイレクトゲインソーラーハウスが工夫され独創に満ちた仕組みにより快適で合理的な環境を作っているのである。こうした知恵を試みる建築家が各地に存するのかもしれない。来年以降の応募にも期待したい。
環境建築というくくりはこれはこれでかなりの幅のあるものであるはずである。またこうした広域にわたる建築の宿題を主題を明示しながら統合的に解くことは建築をより説得力あるものにするのではないか。幅広い主題を持った作品の応募があったことを喜びたい。