JIA環境建築賞

第6回環境建築賞
 
 総評 審査委員長 野沢 正光
 
第六回に当たる今回、応募が倍増しました。私たち関係者はこのことを何より喜ばしいことと考えます。環境について、その質、そのための負担をさまざまに考えることが計画の主要なテーマであるとの認識の広まりが、新しい建築の価値をつくりつつある、と実感します。
環境建築賞の審査は、ポートフォリオによる審査、現地審査の二段階により実施されています。今回特に感じたことはポートフォリオのみで入選を決め、現地審査で優秀賞等を決めることの難しさです。言うまでも無く写真の印象と実物が大きく異なることがあるのです。このことから書類で注目されなかったものの中にすばらしいものが多くあったのではないか、との危惧を拭い去ることができない、ということになります。しかし全応募作品の現地審査が無理である以上これは避けることのできない難問です。少しでも書類の製作にあたり正確なメッセージが表示されることを御努力いただきたいと思います。特に写真の印象が大きく実作と異なることが気になります。細心の選択をお願いしたいと思います。
今回も賞の特徴から環境的最新手法を駆使したものが当然のように高い評価の対象となったのですが、一方、一般に使われている当たり前の技術をうまくインテグレートさせたいくつかの建築にも高い評価がありました。慈愛会奄美病院、瀬戸市立品野台小学校などはその例ですが、このケースはそのどちらもが建物の経営、運営に当たるひとびとのさまざまな工夫と取り組みが建築を計画の段階から納得のいくほどの良いものとしている、と感じました。良いクライアントが実は良い建築の最大の功労者なのかもしれません。審査の中で、こうした傾向をとても好もしく大切なものと考えました。
また環境をキーワードに建築を考えることはまだまだ多岐に渡る提案が可能であることを確認しました。敷地の持つ継続してきた歴史的ポテンシャルが新しい建築のプログラムを堅固なものにしている事例などがそうしたものの一例です、ただ材料に注目すると地域の材が前面に出る事例が少ないと感じました。これは今日のこの国の事情によるのですが、今後地域発の建築材料の選択開発などを通じちいさな産業の育成や再興が始まるなど、地域独特の根拠もつ建築が現れることも夢ではないのではない
か、と思いました。
今後ますます環境建築賞への関心が向上しそれに伴い応募者の数が増加するよう期待します。