第5回環境建築賞
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■ 総評 |
審査委員長 林昭男 |
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第5回JIA環境建築賞の行方は、過去4回の経緯をへて、今回その真価が問われる節目にあたるように私には思われた。環境建築とは何かと問われて、適切な回答を求めることが難しい状況の中で、応募する側も審査する側も戸惑いながら関わっているのが現状である。少なくとも、私はそのように感じている。
今回の応募数は、一般建築部門13作品、住宅部門5作品であり、ほぼ前回と同じであった。これまでもそうであったが、応募作品の傾向は多様であり、環境建築への応募者の問題意識の所在を見極めることが、まず審査員に課せられた。はじめに書類選考によって篩にかけられたが、その網から落ちた作品の中にも環境建築としての主張に傾聴すべきものがあった。しかし鮮明な主張が剥き出しで、消化不良を起こしているような作品もあった。
現地審査をへて、一般部門では、「国立国会図書館関西館」、「NEC玉川ルネッサンスシティ(Ⅰ)」、「CO2:常陸太田市総合福祉会館」の3作品が優秀賞に選ばれ、住宅部門では「宮崎台『桜坂』」が優秀賞となった。優秀賞となった一般建築部門の3つの作品は、全く傾向の異なる作品であるが、環境建築の具備すべき要件に応えて、建築としての完成度も高い。「宮崎台『桜坂』」は集住環境としての微気候のデザインという観点が今日的課題への取り組みとして評価された。今回、最優秀賞を欠いたことについては、説明を必要とするかもしれない。一般建築部門の3つの作品はすでに大きな賞(日本建築学会賞、地球環境大賞、環境・省エネルギー建築賞、環境大臣賞など)を得て、その評価は高い。にもかかわらず、JIAでは、という問いかけである。実は、このあたりにJIA環境建築賞の目指す目標やこだわりがあるように私には思われる。
確かに「関西館」は緊張感にあふれる建築であり、訪れる人を圧倒する。自然採光、景観への配慮、ゼロエミッションなど成果を認めながらも、24時間空調という書庫の管理方式に起因すると思われる運用エネルギーの大きさへの配慮があってほしかった。「NEC」について言えば、NECの企業コンセプトを忠実に建築化している。徹底した省エネ化、ゼロエミッションへの配慮、建設を通して設計、施工の関係者、職人やその家族にいたる人たちまで巻き込んだエコロジカルな意識の高揚への試みなどは注目されたが、床面積の大部分を占める作業空間で働く人たちへ更に細やかな配慮が欲しかった。「CO2」はユニークな建築である。地元の丸太137本を使って支持するテントで覆われたギャラリーは、中庭への開放感が気持ちよく、お年寄りに喜ばれている。これら3つの作品は図書館、事務所、福祉施設と機能、規模、設計与件が異なり、優劣を論じても意味がない。JIA環境建築賞は、低環境負荷でありながら、持続可能な未来へのメッセージを強く発信するものであって欲しい。
JIA環境建築賞も発足以来5年を経て、ようやくその輪郭が明確となってきたように思う。
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