JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.181

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ヒルサイドテラス 3期~6期

ヒルサイドテラス 3期~6期
竣工時 ©ASP
ヒルサイドテラス 3期~6期
現況 撮影:槙総合計画事務所
 
設計者: 株式会社 槇総合計画事務所(3,5,6期)
スタジオ建築計画(4期)
建築主: 朝倉不動産株式会社
施工者: 株式会社 竹中工務店
竣工年: 1977年12月(3期)、1985年12月(4期)、1987年6月(5期)、1992年2月(6期)
所在地: 東京都渋谷区
講評:

 都市のデザインは多数の異なる主体の意思決定の長年の集積で出来上がるのがふつうだが、代官山ヒルサイドテラスは約30年を要したものの、煎じ詰めれば一人の事業主朝倉徳道と一人の建築家槇文彦の一貫した意思のもとに順次形作られてきた稀な事例である。日本が右肩上がりに経済成長した時代に全体が形成され、バブルが膨らみそしてはじけた時代を通過し、世紀が代わりICTの発達で変化のスピードが加速する時代を生き抜いてきた。
 異なる期ごとに、その時代を象徴するデザイン・テイストや材料・テクスチュアのゆらぎを持ちながら、全体として心地よい調和と統合への意志、そして稀有な界隈感を漂わせている。
 旧山手通り沿いに展開するファサードが「代官山」の洒落たイメージを先導し、周辺へ商業圏を広げる明らかなきっかけをつくった。街路から一歩中に入ると多様な空間が展開し、槇文彦が「見え隠れする都市」で語った「奥」のイメージも建物群の大事なデザイン要素となっている。その後周辺に作られていった他の建築群にもその影響が見て取れる。
 日本の都市デザインに果たした貢献は極めて大きくかつポジティブであり、長く健全な状態に保たれてきたことも特筆すべきである。

  (六鹿 正治)

 建築家槙文彦氏の代表作として国際的にも高い評価を受け、その第1期と第2期が2000年の第3回JIA25年賞を受賞しているこの建築を、現時点において、いかに評価すべきなのか。それは、単なる近代的な都市デザインの提案に終わらず、時代の変化を見通しながら、小規模で質の高い連鎖型の開発を続け、代官山という地域のイメージを形成し、街の価値を高めてきた、時間のデザインと空間のデザインの両立にあるのではないだろうか。集合住宅と店舗、オフィス、文化施設等の複合用途の低層の建物群が、コーナー広場やサンクガーデン、ペデストリアンデッキなどの変化に富む外構でリズムよくつながり、都会的な楽しさとヒューマンスケールな安らぎを同時に感じさせるこの街は、第1期完成から50年近く経った今でも、さらにその魅力を増しているように思える。その背景には、施主と建築家の長年にわたる信頼関係と、時間をかけて街をデザインし育てていくという理念があったものと推察される。経済性重視の大規模開発が林立する中で、こうしたヒルサイドテラスの持つ価値は、今後ますます高まっていくのではないだろうか。

  (田村 誠邦)