JIA 25年賞・JIA 25年建築

第16回JIA25年賞 総評

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 JIA25年賞の審査には9つの基準が定められていて、そのうち少なくとも3つの基準について特筆するものがあることが求められています。
 9つの基準は以下のとおりです。
 1.建築に込められた建築家の思想が現在も尊重されていること
 2.人々の記憶に寄与する建築であること
 3.建築の価値を社会に広めてきたこと
 4.設計された時代を象徴するような技術を保持していること
 5.建築が美しく保たれていること
 6.過去の保全、改修の記録が残っていること
 7.未来に向けた長期的な保全計画があること
 8.地域社会や周辺環境へ貢献していること
 9.所有者、設計者、施工者、管理者の連携が現在もよく取れていること
 
 応募されたものは各支部で審査され、上記基準に照らして優れたものが「JIA25年建築」として登録されます。さらにそれらを本部審査委員会で審査し、特に優れたものに「JIA25年賞」を授賞しています。
 2016年度には4つの作品に「JIA25年賞」が与えられることになりました。今年度の4つの作品はバラエティに富んでいます。街の中心にあって資本が注ぎ込まれた拠点オフィス、リゾートでブームの浮沈に堪えたホテル、広がりのある大学キャンパス、そして日常感あふれる賃貸集合住宅です。
 いずれについても言えることは、その建築の命運を決定する立場にある大事な人々の一団に深く愛されてきたことです。深く愛されてきたがゆえにメンテナンスもオペレーションも永きにわたって確実に行われ、次の時代に生き延びるに必要な改修も適切に行われてきたのです。審査委員会では「幸せな建築」という言葉が何度も飛び交いました。まさにその建築にとって大事な立場にある人々に愛されてきた「幸せな建築」こそが長生きできるのだという印象を強く受けた審査プロセスでした。
 わたしたちにとって大事なのは、JIA25年建築やJIA25年賞を選ぶことを通じて、生き生きと永く存在し続ける建築であるための条件は何かということを知ることであり、自らの日々の設計の実践の中にそれを生かしていくことではないでしょうか。各作品ごとのコメントを是非お読みいただき参考にしていただけると幸いです。

審査委員長 六鹿 正治