審査委員 大森 晃彦
「大阪ガスビル」といえば1933年に竣工した歴史的名作。築後80年以上経っている。何で、と思い資料を拝見すると、応募対象は1966年に北側に増築された北館(新館)で、竣工後50年を期してのことだった。安井建築設計事務所の創設者、安井武雄の代表作として知られる当初の「大阪瓦斯ビルディング」は現在、南館と称されている。発表時、「使用目的及び構造に基ける自由様式」と記されたそのデザインは、新しい建築潮流を映しつつ、建築家の想いと感覚が込められた名作であり、日本で最も美しい都市街路のひとつである御堂筋の顔となっている。
33年の年を経て北館を設計したのは佐野正一。街区の1ブロックを1建物とする4面ファサードの現在の姿を完成させた。構造的には分棟で、エレベータホールでのみ新旧の動線が接続する。佐野は設計にあたって、旧ビルの要素を「そのまま延長するのでなく全体の風格なり美しさとしてとらえて新ビルに生かす」という方針を立てたと記しているが、そこに生み出されたものは、新旧が一体となった都市建築の成熟であった。全体の風格と美しさ、そして建物の機能が、愛着を持って維持管理されていることに敬意を表したい。 |
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