本施設は、単なる古民家改修にとどまらず、建築家が古き良きものへの深い敬意と再発見の視点をもって取り組んだ好例である。官民が連携した協力体制のもと、建築のみならず、まちづくりやインテリアデザインにも波及する巻き込み力を発揮し、地域全体の活性化に寄与している点が高く評価される。
　派手な演出を避け、素材本来の魅力を丁寧に引き出すことで、建物の歴史や地域の風土を静かに語りかける空間を創出している。また構造補強や断熱改修など目に見えない部分にも細やかな配慮がなされ、建物の寿命を確実に延ばしている。
　快適性と建物・町並の持続性を両立させ、環境負荷を抑えた姿勢は、時間の積層を未来へと継ぐ建築の在り方を示すものとして、JIA環境大賞にふさわしい建築である。
松田まり子