施主と設計者の良い関係が良い建築をつくり、その結果が高い持続性に結びつく。その典型とも呼べるのがYKK80ビルであり、リスク分散を念頭に富山本社とのダブル本社の一翼をこれから長い間担っていくのであろう。西面ファサードは、日射しを和らげるための特注パイプを三角に並べ簾状に設置し、まるで薄い布で覆ったような軽やかさが見事である。見る角度で表情が繊細に変化する様は、環境対策を行うと同時にアルミ会社の新しい顔を創り出している。一方向に飛ばしたアーチ型PCがサポートし実現した微風を感じる天井輻射冷暖房などの新しいワークプレイス、アカデミックなメンバーも入れてのコミッショニングによる性能確認の実施などは他に類を見ない。昨今、環境配慮型という冠をかぶせるために、ともすると重装備になりがちな部品のスペックを、トータルバランスを考慮しながらまとめていった設計プロセスはこれからの指標となりうると感じた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（安田 幸一）