県の職員でもあった園長がその長い経験を活かすべく、チャレンジャブルな設計者とタッグを組み、保育園のあるべき姿を追求した作品である。「子供を一人の人間として扱う施設」というコンセプトが施設全体へ通底し、子供を職員が目で確かめて行動観察できるように中庭を中心とした回遊性の高い構成となっている。築山と滑り台、池、砂場を有する中庭を取り囲むような外部廊下と屋上テラスとブリッジで構成される。運動会でも廊下を子供たちが走り回る。自然光や自然通風の採り入れ手法、雨水の再利用、屋上では夏季にはプール、屋上菜園による食育の考え方など、まだ体が十分に環境に順応できない園児を大切にしながら、かつ自然との共生を促す仕組みが散りばめられた高水準の建築である。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（安田 幸一）