物を大切にして暮らす美しい心と山間の美しい風景が重なる印象的な体験であった。この建物は、過疎化が進む、徳島県の山間の小さな町に立つ、いわばゴミの集配所である。ゴミを分別して捨てるという、人の基本的な行為の一つに着目し、建具やタイル、ガラス瓶、農家のメッシュカゴに至る地域の廃材を組み合わせてつくられたこの建築は、小さな町の人々の誇りになっており、世界中から人が視察やインターンに集まってきていた。ここで感じられたのは、物を介した新しい公共性である。物は、人の思い出や記憶が詰まったメディアであり、それを建築とつなぎ合わせることで人の環境意識や行為を促す、そこに新しい環境建築の姿を見た気がする。

（末光 弘和）